幻の「吉祥夢」でアイを叫んだネイチャー - 「ネイチャージモン」

月刊ヤングマガジンという月刊の漫画雑誌があります。
その名の通り、月刊の方のヤングマガジンです。
実はヤングマガジンと名のつく雑誌が2種類ある(週刊と月刊)というのは、人によってはオドロキかもしれません?
月刊ヤングマガジン No.4 2012年 4/1号 [雑誌]
とは言え、あくまで個人的にですが、名前や表紙よりも中身の方がよっぽど違う印象を受けます。
赤面悶絶の絶えないラブコメ&笑顔になれる人間ドラマならこみっく☆すたじお(此ノ木よしる)や
不慮の事故による無人島への漂着が、やがて大きな時間のうねりを起こす「レッツ☆ラグーン」岡崎武士)に加え、
こみっく☆すたじお(1) (ヤングマガジンコミックス)レッツ☆ラグーン(1) (ヤングマガジンコミックス)
『月刊ヤンマガ』は素敵なエロコメの宝庫でもあります。
性的昂ぶり、もといエロコメ度を加速させる順番としては、
「南国ちゅーばっか!」こむそう)→イモリ201(今井ユウ)→Kiss×sisぢたま某)がオススメです!
南国ちゅーばっか!(1) (KCデラックス)イモリ201(1) (ヤングマガジンコミックス)Kiss×sis(1) (KCデラックス)


と、ここまで主に可愛らしい見た目の作品を紹介しましたが、今日の本命は絵柄的に対局
そして絵柄だけでなく、内容も強烈に濃く、頭だけでなくお腹へのインパクトも大きい。
そう、ネイチャージモン」(刃森尊×寺門ジモン)です。
ネイチャージモン(1) (ヤングマガジンコミックス)
以前のB級グルメ作品特集の際にも少々触れた本作は、ネイチャーこと寺門ジモンの肉への愛の物語
[稲山覚也][旅井とり×坂戸佐兵衛][水沢悦子×久住昌之] 読んで食べ尽くせ!幸せS級のB級グルメ作品達!
極上の肉を食すために、濃厚なキャラクターのネイチャーが東奔西走。
一種の様式美も備えた安心感のある、肉への愛に溢れたド直球グルメ漫画と言えると思います。


しかし、そんな「ネイチャージモン」の最新話は、その愛と様式美を逆手に取った内容だったのです!
寺門ジモン(原作)・刃森尊(漫画)「ネイチャージモン」『月刊ヤングマガジン』講談社, 2012, p.259
まさかのネイチャージモン」で(きっと)伏線でしたよ!
でも、本作において、この場面が(きっと)伏線とは極めて気付き辛いよ!


今回の舞台は、吉祥寺の幻のお好み焼き屋「吉祥夢」(きっちょむ)
意外な“粉ものネイチャー”再来、更に料理をするのはネイチャー本人で店も貸切状態。
そうまでしてもやりたかった、ネイチャー曰く「一生で一番の渾身のお好み焼き」がテーマ。


そんな少々のイレギュラーはありつつも、
編集部若手部員のコマツの振り回されっぷり
ネイチャーの時にテキトー、時に傍若無人に見えなくもない食へのコダワリ
ハイテンションでいて真面目な調理・食欲を唆られる食べっぷり…と、いつものネイチャーな気でいたのです。
寺門ジモン(原作)・刃森尊(漫画)「ネイチャージモン」『月刊ヤングマガジン』講談社, 2012, p.271
しかし、食事を始め一息つくと、ネイチャーから明かされる衝撃の事実。
今回の店「吉祥夢」は本当に幻の店であり、既に閉店しているとの事。
しかも店主のオヤジサンは現在音信不通。そこから明かされるオヤジサンとネイチャーの過去。


コマツや読者への謝罪と共に、ネイチャーは言います。
今回の「吉祥夢」編は、オヤジサンに対する自分からの個人的なラブレターだと。
そしてオヤジサン本人への語り掛け、読者へ情報提供を求め、余韻を残しつつ「吉祥夢」編は締め。
寺門ジモン(原作)・刃森尊(漫画)「ネイチャージモン」『月刊ヤングマガジン』講談社, 2012, p.285
作品内でも「いつもとは一風変わったエンディング」と明言。
けれど、「情報は真剣に募集」の旨が続いています。
尚、情報の宛先は以下の通り、或いはヤングマガジン編集部コマツまで。

〒112-8001 東京都文京区音羽2-12-21
講談社 ヤングマガジン編集部 月刊ヤングマガジン4号
ネイチャージモン 吉祥夢のオヤジサン」係


つまり、今回、ある意味では何もしていないと言えるのでは?
やった事だけを考えれば、ネイチャーが自分でお好み焼きを作り、コマツに振舞ったのみ。
当然メインはオヤジサンの情報募集で、吉祥夢という場所でお好み焼きを作る事は背景として必要でしょう。
けれど極論を言ってしまえば、同じ行為だけなら自宅でも全くの不可能ではないはずです。


でも、その内容を敢えて一話の漫画として描く。
本作は元々ネイチャーの趣味と実益を大いに兼ねた作品で、それがオモシロさの一つだと思います。
そして今月のネイチャーは、その極地に至ったような気もしたのですな。
個人的に大変熱く、馬鹿野郎(※褒め言葉)な内容でした。
そんな馬鹿野郎の夢の果て“「吉祥夢」オヤジサン編”も、いつの日か読める事を願っております。


最後に、本作は最新コミックス7巻が4/6に発売予定
今回のテーマはホルモンという事で、一冊丸ごとホルモン尽くし!
個人的には、生ホルモンへの唆られ度が異常。



蛇足(?)
冒頭で挙げた通り、『月刊ヤンマガ』には桃色な作品が多いです。
つまり読んでいる時は、必然的に頭の中がピンク色になる。
その状態で以下のコマを目にすると、「恥辱の中でのたうちまわれ」という言葉に胸以外もときめくってものです。
かわすみひろし「風より疾く 16」『月刊ヤングマガジン』講談社, 2012, p.421
尚、この作品「風より疾く」かわすみひろし)は剣道漫画なので、そういう意味での「恥辱」は一切ありません。
むしろ剣道での清々しい雰囲気、純粋でけれど複雑な龍子と和音の関係に癒される素敵な作品でした(今回で完結)。


そして完結と言えば、「こみっく☆スタジオ」(此ノ木よしる)も「次号感動のグランドフィナーレ」との事!? ワッザ!?
春は出逢いと別れの季節なんだなとしんみりしつつ、モチロン来月に期待重点です。