小川麻衣子リターンズ!きっと楽しい地球侵略!? - 「ひとりぼっちの地球侵略」

ゲッサンという月刊の漫画雑誌があります。
正式名称は『月刊少年サンデー』という訳で、サンデー系列の少年漫画誌です。
ゲッサン 2012年 04月号 [雑誌]
創刊から約2年半と雑誌としては若い(?)部類に入るかもしれませんが、内容は安定のオモシロさ。
その理由にベテラン勢とフレッシュ勢の調和・ジャンルの幅広さ等が挙げられるかと思いますが、一言で言えば盤石
初期の連載開始作品では、破竹の勢いを見せる歴史活劇信長協奏曲石井あゆみ)や
加速し続ける音楽・青春・少年漫画ハレルヤオーバードライブ!高田康太郎)が特に有名かなと思います。
信長協奏曲 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)ハレルヤオーバードライブ! 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
また少し前には、一風変わった(?)、けれど心地よい港町の喫茶店の日々を綴った「ちろり」小山愛子)や
マイガール」でもお馴染みの佐原ミズ先生らしい、夢を追う等身大の少年漫画「鉄楽レトラ」も始まる等、
ちろり 1 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)鉄楽レトラ 1 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
少年漫画らしさを軸に、よりカラフルに間取りが広がり、読んでいて華やかさが増してきたような気が。


さて、そんな『ゲッサン』で個人的に忘れてはならない作家だと思うのが、小川麻衣子先生。
ゲッサン』の初期から連載していたとある飛空士への追憶」のコミカライズは、
名コミカライズの一つとして挙げられる、スバラシイ出来
だったのではないかと思っています。
とある飛空士への追憶 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
昨年始めに同作が完結した後は定期的に読み切りを掲載、新連載への期待と熱が(個人的に)高まっていました。
ちなみに、その読み切り「8月の面影」と「ひとかどのまちかど」は「とある飛空士への追憶」最終4巻に併せて収録されています。
(どちらも異なる方向性で、それでいて小川麻衣子先生らしいほろ苦さや甘酸っぱさが詰まっており、つまりオススメです)


ともあれ、個人的に心待ちに信じていた小川麻衣子先生の新連載が、遂に今月号から始まりました!
連載としては一年ぶり、いざ表紙を見た時は心の中で静かに「俺(達?)は君を待っていたッッッ」な気分。
という訳で胸が踊るのはモチロンですが、この新連載、何やら“新鮮”なのです。


タイトルは「ひとりぼっちの地球侵略」で、表紙の謳い文句は「本日、 侵略 日和なり。」。
高校入学の日、主人公の広瀬岬一が奇妙な先輩(女子)に文字通り襲われかけ、物語は幕を開けます(大雑把なまとめ)。
小川麻衣子「ひとりぼっちの地球侵略 1」『ゲッサン』小学館, 2012, p.36
かつて見たUFOの群れ、ミステリアスな先輩(女子)、崩れ落ちる平和な日常などなど、謎を孕んだ物語は始まったばかり。
それでも、小川麻衣子先生の作品にしては珍しいくらいに直球ド真ん中ストレートな印象を受けました。


とは言っても、小川麻衣子先生の今までの作品が悉く捻っている・斜め上を行っているという訳ではないはずです。
『サンデー超』時代の読み切り作品を含めて考えてみても、ボーイ・ミーツ・ガール等の少年漫画の王道的要素はありました。
ただ本作は『ゲッサン』内や他の少年漫画誌掲載の作品と比べてみても、王道を上回る極めて少年漫画らしい一話だった気がします。
故に、小川麻衣子先生らしい雰囲気+ビックリするくらい濃厚な少年漫画の化学反応という意味でも期待できるのかなと。


但しその一方で、いつもの小川麻衣子先生らしさもバッチリ確認済み。
それが、少女の個人的に被虐心をくすぐられる良い笑顔。
小川麻衣子「ひとりぼっちの地球侵略 1」『ゲッサン』小学館, 2012, p.63
この一コマだけだと普通の良い笑顔に見えるかもしれませんが、この笑顔に至るまでの流れを読むと
きっと多くの読者が、その笑顔で踏んで下さいと願う事は想像に難くありません
この素敵な笑顔は、『つぼみ』で不定期連載中の「魚の見る夢」でより顕著なので、特に踏まれたい人はチェック推奨。
(但し踏まれたくなるのはあくまでも副次的な要素で、随所から感じられる仄暗さやフェティッシュさが一番の魅力かなと)


本作はまだ一話という事で、紹介できる部分は決して多くありません。
ただ現時点で確かなのは、待望の小川麻衣子先生の新連載は“らしさ”と“新鮮さ”を共に纏った作品だという事。
一話時点では“新鮮さ”の比率の方が大きい気さえして、ますます目が離せない予感がします。


ちなみに、2012年1月号からは「FLIP-FLAP」や「友達100人できるかな」でもお馴染み、
とよ田みのる先生の新連載「タケヲちゃん怪物録」も始まっており、コチラも要注目です!


正直、『ゲッサン』は全体的に、パッと見では良く言えば控え目・悪く言えば地味な所はあると思っています。
けれど実際に通して読んでみると、冒頭にも書いた通り、トータルで安定したオモシロさがあるとも思うのです。
この「トータルで」というのもミソで、作品の入れ替わりが起こっても盤石な満足度は不変な印象を自分は持っています。
最後に些か蛇足な総括だったかもですが、ともあれ『ゲッサン』&小川麻衣子先生の新連載、オススメです!!