読んで食べ尽くせ!幸せS級のB級グルメ作品達!

突然ながら、食べる事は好きでしょうか?
食欲は人間の三大欲求に数えられるだけあって、食を主軸に据えた料理漫画・グルメ漫画は一大ジャンルを築き上げています。


例えば、連載中の直球グルメ漫画として私がパッと思い付くのは、「ネイチャージモン」(刃森尊×寺門ジモン)です。
ネイチャージモン(6) (ヤンマガKCスペシャル)
オオクワガタ採取等、食以外の内容が描かれる事もありますが、今作の見所は何と言ってもでしょう。
極上の肉とその肉に対するネイチャーこと寺門ジモンの真摯な愛には、畏敬の念さえ払いたくなります。


また、所謂B級グルメに関する庶民派グルメ漫画(?)なら、かの有名な「孤独のグルメ」(谷口ジロー×久住昌之)もあるかなと。
孤独のグルメ 【新装版】
ネタとしてもこよなく愛されている今作ですが、独特のリズムで語られるB級グルメの数々が食欲を刺激すること多々。


こういった具合に、一口にグルメ漫画と言っても、その内容や対象は実に多彩です。
個人的には、幻の食材や高級料理よりも、日々の生活で私の財政事情でも食べられそうな庶民派グルメがお気に入り。
という訳で、今回は、満足度S級間違いなしのB級グルメ漫画を紹介します!

花のズボラ飯」(水沢悦子×久住昌之

花のズボラ飯
まずは、「孤独のグルメ」と同じ原作者繋がりで、「花のズボラ飯」です。
Eleganceイブ』という女性向け漫画雑誌に連載されている今作ですが、独自の久住昌之節はモチロン健在。
読み始めると、コダワリある食に対する心理描写と五月雨式に繰り出されるオヤジギャグにグイグイ惹き込まれていきます。


今作のテーマは、タイトルにもなっている「ズボラ飯」。
要するに、可能な限り料理への労力を抑えるべく、手を抜けるだけ抜いた料理達です。
それだけに正式な名前がない料理も多く、毎回の話の初めには、料理名ではなく食材名が描かれています。
奇跡のズボラ飯(一回限り)
とは言え、花さんが作り出すズボラ飯は極上に美味そうな物ばかり。
そうめんやカレーのような馴染みのある料理も、徹頭徹尾、ズボラなりの全力で美味しく頂きます。
むしろ、私や周囲の一人暮らしの男性陣からは、ズボラ所か充分に凝っているという意見が多数挙がっている程。


そして、そんなズボラ飯と向き合う花さんの態度もまた素晴らしいのです。
一人暮らしで料理を作っている際、ついつい独り言や鼻歌が漏れてしまう事、あると思います。
その様子が、久住昌之のリズムでテンポ良く描かれると、笑いつつもどこか納得。
「あっあ」「夏…!!」
極め付けは、このズボラ飯を食べた時のリアクション!
思わずツッコミを入れたくなる時もありますが、この圧倒的な説得力の前では、それは野暮という物でしょう。
余談ながら、寿司やしゃぶしゃぶ等の高級グルメを食べた様子がカットされているのも、今作ならではのコダワリだと思います。

てんむす」(稲山覚也

てんむす 1 (少年チャンピオン・コミックス)
次に、『週刊少年チャンピオン』で連載中の「てんむす」です。
タイトルから既に美味しそうな今作は大食い(競技)漫画なので、グルメ漫画とは異なるかもしれません。
けれど、今作と今回紹介する他のグルメ漫画は、食を扱う上で非常に大切な要素を共通して持っています。


それは、美味しい食べ物を美味しそうに食べるという食に対する姿勢です。
「大食い競技は食への冒涜なのでは?」という意見は、今作において異なる視点で何度も登場します。
例えば、第1巻では料理を作る立場から。第2巻では、大食い競技参加者から。
美味しそうに食べるヨ!
そして、大食い競技に懐疑的な意見が「何度も登場」という事は、食を軽んじている輩も存在する訳です。
でも、主人公:天子をはじめとした食い道部の面々は決してそんな事なく、食べる事を全力で楽しんでいます
楽しそうに美味しそうに料理を食べる彼女達は、むしろ一般の人よりも食に重きを置いていると言って良いはず。


また、今作は、非常に真摯に大食い競技と向き合っている作品でもあります。
「大食い」と「大食い競技」の違いや「食」と「喰」という字に込められた決定的な意味の差など。
彼女達は、大食い競技に臨む者だからこそ、より食に敬意を払っています。
「食」と「喰」
今作は、熱く燃える展開や天子達の可愛さも大きな魅力でしょう。
ただ、今作の一番の魅力は、食に対する誠実な姿勢ではないかと思うのです。
普段は可愛らしい彼女達が大食い競技と向かい合った時、素直にカッコイイと感じるのは私だけではないはず!

めしばな刑事タチバナ」(旅井とり×坂戸佐兵衛

めしばな刑事タチバナ 1 (トクマコミックス)
最後に、『週刊アサヒ芸能』という一般誌で連載中の「めしばな刑事タチバナ」です。
連載が漫画誌でないために第1巻が出るまで完全にノーマークでしたが、この漫画は面白い&熱い!!
名は体を表すという言葉の通り、タチバナという名前の刑事が延々とめしばな(めしの話)を繰り広げます。


こう書くと面白さを疑われそうですが、その「延々」はコダワリの証
徹底的に調査した庶民派料理を、大の大人が大真面目に熱く語るのです。
しかも、その料理は、チェーン店の牛丼や袋入りラーメン等々、私達の日々の生活と密接に関わっている物ばかり。
大体こんな漫画。
グルメ漫画と言うと、高級料理や手の込んだ料理に焦点が当たる事が多い気がします。
けれど、今作で語られる料理は私でも常日頃から食べている物が散見され、思わずニヤリ。
この徹底したB級グルメへのコダワリは、今作最大の魅力と言っても過言ではないはず。


では、何故、たちばな刑事はこれ程までにB級グルメを熱く語るのか?
綿密な調査・行動へと彼を突き動かす原動力は何なのか?
それは、食への飽くなき探究心や好奇心のみ
「だから燃えるんだ」
本職の業務とは一切これっぽっちも関係がない。
しかし、だからこそ、「食っぴくぞ!」という名台詞を自然に吐く程に熱く燃え上がる。
この本人しか分からない趣味の領域での熱は、漫画をこよなく愛する自分も大いに頷く所です。



私自身、食べる事が好きで、それが美味しい物や好きな物なら尚の事。
グルメ漫画を読んでいて、作中で取り上げられている料理には激しく憧れます。
その点、今回の更新で触れたB級グルメ作品達は、現実の食生活をも豊かにしてくれる可能性を秘めていると言えます。


また、食の楽しみは食べる事だけでなく、食で繋がる事もあると思います。
たちばな刑事のように、自身の食へのコダワリを語り合える相手がいると言うのは、実にありがたい事。
同じように、美味しい物を食べるために一緒に出掛けたり、美味しい物を食べながら話したり。
美味しい食で、親しい人と繋がれたら、食の幸せは倍以上ではないでしょうか?


そして、最後に一つ言いたいのは、食べ物を美味しそうに食べる女の子はカワイイという事!
花のズボラ飯」や「てんむす」からは健康的なエロスさえ感じるとは、私や周囲の駄目な大人達の共通見解。
実際、美味しそうに食べる姿&ふくよかなお腹が魅力と言っている「溺れるようにできている。」(シギサワカヤ)という作品も存在します!
溺れるようにできている。 (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)
まま、エロスは言い過ぎだとしても、こういった食から生まれる魅力もあるのではと思うのでした。