「鋼の錬金術師」最終回、“成長を刻んだ身長”の魅せ方
最終回が掲載された『少年ガンガン』7月号から早半年。
遂に、遂に、待望の「鋼の錬金術師」(荒川弘)完結巻が発売。
ガンガン本誌を含めると、何度読み返したか皆目見当もつかず、未だに何度も涙が出そうになる。
読む度に震えて燃え尽きて、初めて最終回を読んでからずっと書きたいと思っていた感想(?)も、今日までずれ込む事に。
そんな念願が叶う今回は、再終回での“成長を刻んだ身長”の魅せ方の話。
実は、最後の最後まで、エドがウィンリィの身長を抜いた描写が伏せられているはず。
そもそも、エルリック兄弟がウィンリィに再会するのは、自分達の足で長い旅路の果てに故郷へ戻ってから。
そこから徹底して、エルリック兄弟(特にエド)とウィンリィが真横や正面で並んで描かれる事はない。
どのコマを用いても良いが、今回は対照的な2コマを抜粋。
まずは、座っている場面。
駅のベンチで何気なく隣合って座る二人。
しっかりと腰掛けるウィンリィに対し、ダラッと腰掛けるエド。
二人の性格が座り方に上手く活かされ、せいぜい身長が並んでいるようにしか見えない。
次に、立っている場面。
列車が駅に到着し、いよいよ出発のエド。
この二人が立っている一連の場面でも、遠近法,台詞だけのコマ,アップ等の技術によって、二人の背は並んでいるくらいに見える。
そして、最後の最後、エドがウィンリィに“等価交換”という名のプロポーズをして、ウインリィから予想外の返答をもらう場面。
エドがウィンリィを抱きしめた時に初めて、二人の身長を真横で見て、エドがウィンリィの背を越えたと意識できる。
エドがウィンリィと再会してから、このラストまで一貫して、二人が(読者視点で)同じ目線で描かれる事はない。
更に、この抱き合う場面も正面からではなく真横からで、正面から二人を見られるコマは次ページの写真まで存在しない。
これは意識的に“狙った”描写と考えても、穿ち過ぎではないと思う。
おチビさんと呼ばれていたエドの面影は今やどこにもなく、心身共に逞しく成長して、鋼の心を手に入れたエド。
かつて、ウィンリィはエルリック兄弟のお姉さん的ポジションで、二人を見守り引っ張っていた面があったと思う。
だから、ウィンリィの背を抜いたエドが、共に闘い・守り抜いた彼女を抱きしめる場面では、感動して思わず笑顔が零れた。
上記の通り、最終話の本誌掲載から半年経っている上、アニメでも原作に忠実な描写がしっかりされていた事を確認済み。
そのため、既に同様の感想(?)が挙がっている可能性もあるけれど、温め続けてどうしても書きたかった内容のため、ご了承を。
言うまでもなく、大団円で完結したハガレン。
後日談に当たる特別編や描き下ろしも、作品のフィナーレを損なう事なく、完璧な内容。
但し、ハガレン・ワールドは、まだ終わらない。
2011年夏には、劇場版「鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星」が上映予定。
終盤付近は、ガンガン本誌で震え泣き、アニメで震え泣き、単行本で震え泣きの三拍子。
原作と同時完結を果たしたアニメも相当良かった訳で、どういう内容になるのか映画にも期待。
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最終巻に収録されている内容だけを振り返っても、もう語りたい事がいっぱいで。
全巻通してだったら、一朝一夕では絶対に語り尽くせない。
言葉で言い表せないくらい、素晴らしい長編作品だった。
荒川先生は作者コメントで、こう書いている。
こちらこそ、本当にありがとうございました&10年に及ぶ連載お疲れ様でした。(前略)
そして連載を終えた今、
この作品に関わって下さった全ての方に
「またどこかでお会いしましょう」と
「ありがとうございました」を。
紛う事なき名作の完結に最大級の感謝と敬意を表しつつ、今回は締め!