足りないモノを補い合える二人だけの“絆” - 「サヤビト」

今日は、「サヤビト」(伊咲ウタ)で描かれ続けている“絆”について。
第1巻の帯で「その背負いし剣は、運命を繋ぐ絆――。」,第2巻の帯で「愛と絆と戦いの物語。」,第3巻の帯で「その絆に号泣。」と銘打たれている通り、この作品において“絆”は一つのキーワードだなぁと、ふと思った。
じゃあ、その“絆”とは、どういう関係なのだろうかと考えてみた。


サヤビト」は、『good!アフタヌーン』連載作品で、最新第3巻が先日発売したばかり。
サヤビト”と呼ばれる人間を模した人造兵器&その主人アドを巡る物語。
サヤビト(3) (アフタヌーンKC)
メインとなるサヤビト&主人のコンビ:クイファとリヴィアは、共にサヤビトでありながら、互いが互いの主人という異例の存在。
黒の守護神プレティトーレ”という組織に所属する二人は、任務で各地を旅して、様々な関係を持つサヤビト&主人に出逢っていく。


クイファ&リヴィアを除いて、今までハッキリと登場した主人&サヤビトは以下の通り。

現主人サヤビト登場話
トリル少年イクスepisode 1, 2
キィト&スィトニルepisode 3
カフ爺さんアレッシアepisode 4
グエフ師匠ミトepisode 5
サラレトラepisode 6以降
フェーオ奥様(実質、息子のコジモ?)フィオepisode 9
当然、サヤビト&主人となった理由,置かれている境遇,関係のあり方は違えど、皆が二人だけの“絆”をそれぞれ持っていたように感じた。
主人達は、例えば見守ってくれる家族として、育て上げる弟子として、背中を預ける相棒として、どこか欠けているサヤビト達を想う。
サヤビト達は、例えば見守る家族として、自分を受け止めてくれる師匠として、信頼できる相棒として、どこか欠けている主人達を想う。
そうやって互いに支え合い、兵器と使い手という関係を超え、幸せな時間を一緒に生きる。
家族としての“絆”
既に故人となっている者や望んだ幸せを一生叶える事は出来なかった者もいる。
しかし、たとえ一時の間だったとしても、サヤビト&主人は幸せな時間を共有していたと言えるはず。


ただ、一方が一方に望み過ぎてしまうと、その関係は崩れてしまう事も描かれている。
トリル少年からイクスを奪っていたチョイス村長は、自分に都合の良い人形となるようイクスに命じ続けた。
また、ニルの前主人:グイード=カゼッラ大佐は、主人を失うとサヤビトは死ぬと分かった上でニルに瀕死の自分を殺させた。
結果として、どちらの場合も、幸せを得たとは言い難い。


お互いに足りないモノを補い合って、でも決して求め過ぎず、与え過ぎず。
そうやって寄り添う事で、二人一緒に幸せな時間を過ごす。
それが、「サヤビト」という作品・様々なサヤビト達&主人達を通じて、描かれ続けている“絆”なのかなぁと。


かつて、リヴィアは、「サヤビト人造人間まがいものだ」と蔑み言い切ったチョイス村長に対して言った。
サヤビトは『調和』を求める存在
主人アドが絶対だとしても――――
サヤビトは調和を求める存在よ
そのために
主人アドの命令は道理にかなっていなくてはならないの
リヴィアが言った調和と言うのは、最終的に、そういう二人だけの“絆”に繋がるんじゃないかなぁ。


当のリヴィアとクイファは、まだまだ凹んだり悩んだり焦ったり、“絆”を紡いでいる最中に見える。
これは二人(特にリヴィア)の性格や若さ故の未熟さが大きな理由だと思うけれど、二人それぞれがサヤビト且つ主人という異例のコンビである事も関係しているのかも?
二人なりの“絆”?
でも、リヴィアとクイファも、二人なりの二人だけの“絆”へ向かって一歩一歩進んでいる。
そんな事を、第3巻と今月号の最新話を読んで、微笑み思ったのでした。


ちなみに、その「最新話」は、第3巻の直後の話。
つまり、第3巻と『good!アフタヌーン』を同時購入すると全話コンプできるので、グフタも是非是非!
good (グッド) ! アフタヌーン 第12号 2010年 10月号 [雑誌]
余談ながら、全体のポテンシャルが高い雑誌を挙げるならば、『good!アフタヌーン』は間違いなく挙げるという事を書いて、本日は締め!