匡平の“奥底に眠る黒くて巨大な力”を『魅了』と予想してみた。 - 「神様ドォルズ」

今日は、「神様ドォルズ」(やまむらはじめ)の主人公:匡平の秘められた強大な力(orその副産物)って、周囲の人間を魅了する力なんじゃないだろうか、というお話。
自分は乳乃さん…もとい、日々乃さん派だけど、神様ドォルズ」の真のヒロインは阿幾だと思う話も真面目に交えて。


神様ドォルズ」は、アニメ化も決定した『月刊サンデーGX』連載の伝奇作品。
神様ドォルズ 3 (サンデーGXコミックス)
人形“案山子”を神と祀る独自の風習が残り、時が止まっているかのような閉鎖的な山村:空守村。
何もかもに嫌気が差し、そこから逃げるように上京して来た主人公:枸雅匡平。
故郷から解放された平穏な生活を望む匡平だったが、逃れる事の出来ない宿命は、彼と周囲の人間を様々な思惑渦巻く戦いに否応無く飲み込んでいく。


主人公の匡平は“隻”(案山子を操る事のできる役職)の資格を過去の事件で失っているので、人間の域を超えて戦うための特別な力を持っていない。
そのため、主人公である以上は物語の中心に立っているけれど、彼のポジションは基本的に部外者傍観者と言って良いはず。
にも関わらず、匡平を慕う者・匡平に惹かれる者は後を絶たない。


象徴的なのは、匡平が“隻”だった頃から彼と関わりがある2人の“隻”:阿幾とまひる
過去の事情を知った日々乃さんに対して、第4巻で阿幾は語った。
ヤンデレ阿幾

君も……お社のボンクラ連中も気づいちゃいないが、
匡平あいつの奥底には、黒くて巨大な力が眠ってる。
(第4巻, P63)
第5巻から登場した隻:日向まひるも、この阿幾の台詞に同意した上で、日比乃さんに捲し立てた。
シリアスまひる
あたしたち2人だけが目の当たりにした……匡平様あのひとの本当の力。
鬼神の如く玖吼理を操り、すべてを破壊しつくす。
他の連中など及びもつかない孤高の戦士なのよ。
(第6巻, P123)
作品を読めば直ぐに分かる事だけれど、この2人の匡平への想いの強さは凄まじい。
かつて優しく接してくれて最後の最後まで諦めずに命を救ってくれた匡平に対して、まひるが過激な愛を向けるのはまだ合点が行く。
一方、諸々の事情はあるにせよ、第1話から同族として匡平を求め続ける阿幾の想いは狂気と言って差し支えないと思う。
この彼を突き動かす狂気的な想いこそ、「真のヒロインは阿幾」と書いた訳。
ヤンデレとは違う気がするけれど、匡平への執着心であれば、ヒロインを凌いで作中一番のはず。


では、匡平の過去を知る人だけが彼に惹かれるのかと言うと、決してそうではない。
物語が進むに連れて、2人の“隻”以外の人間も、匡平に惹かれる/着目するようになって行く。
自らの権力拡大を目的に暗躍する空守村初の国会議員:平城毅。
匡平に対するコンプレックスを募らせ続ける平城の秘書:下山。
匡平に反省や思慕の念を見せ、詩緒達と和解した弟:桐生。
デレ桐生
極付けは勿論、匡平の宿命に巻き込まれ翻弄され、第7巻の最後で遂に結ばれた日々乃さん。
日々乃さんを抱き締めてうっすら微笑む
しかし、この日々乃さんを抱き締めた直後の匡平の微笑みが、どうも黒い気がするんだよなぁ。
愛しい人へ向けた安堵の微笑みなのか、自分の所有物へ向けた(無意識の)黒い笑みなのか、この時点ではハッキリしない。
もし後者だとしたら、皆に愛されると言うよりは、周囲の人間を次々と魅了しているという表現の方が適しているかなぁと。


但し、阿幾は上記の台詞に続けてこうも言っている。
それこそが枸雅の血脈ってヤツで……それに比べたら、
お社の連中がチヤホヤともてはやしてる詩緒の力なんざ、匡平のおこぼれに過ぎないんだぜ?
(第4巻, P64)
阿幾曰く、詩緒の“隻”としての力は、匡平と比べたらおまけのようなモノ。
言い換えると、匡平の秘められた強大な力も、やはり“隻”としての“案山子”を操る力だろうと。
一番初めに「匡平の秘められた強大な力(orその副産物)」と書いたのは、そういう理由。
ただ、少なからず無意識に神(案山子)と人を魅了する力はありそうだなぁと思ったのでした。