豆腐屋から商店街へ、3姉妹からみんなへ、広がって行くご近所の輪! - 「うのはな3姉妹」

仙石寛子水谷フーカの単行本が発売とあっては、一時的にでも復活せずにはいられないな!(3回目)
という訳で、前々回は「三日月の蜜」(仙石寛子)感想、前回は「この靴しりませんか?」(水谷フーカ)感想を書いた。
[仙石寛子][4コマ] 丁寧にありのままに描かれる移り行く想い、変わらない想い、純粋な想い - 「三日月の蜜」
[水谷フーカ] 瑞々しく、優しく、幸せな“似たもの同士”達の日々 - 「この靴しりませんか?」
一週間半の遅れが(俺に)生じたけど、いよいよ今回は、最後の一作品「うのはな3姉妹」の話!


うのはな3姉妹」は、前回感想を書いた「この靴しりませんか?」と同時発売の水谷フーカによる初の4コマ漫画単行本(まんがタイムコミックス)。
所謂ファミリー向け4コマなので、可愛さ・賑やかさよりも、落ち着き・人情味が溢れる作風。
帯の“朝ドラ風4コマ”という謳い文句は、きっと的確な喩えなんだと思う。※1
うのはな3姉妹 1 (まんがタイムコミックス)
今作は『まんがホーム』にて隔月連載でスタートし、好評につき、並行して『まんがタイムファミリー』で毎月連載が決定。
先月号から『まんがホーム』でも毎月連載が開始され、現在は両方の雑誌で毎月連載中。


作品タイトルの“うのはな3姉妹”が示している通り※2、物語の主役は、とある豆腐屋さんの3姉妹(&父ちゃん)。
いつも笑顔を絶やさないおっとり&しっかり者の長女:梅乃(表紙左奥)。
元気ハツラツ、時折暴走、でも基本的にはお気楽ぐーたらの次女:桃子(表紙左)。
素直で真面目で一生懸命、時に不憫な頑張り屋さんの三女:桜(表紙右)。
一家の大黒柱、娘達をこよなく愛するガンコ一徹の豆腐職人:侘助
この4人を中心とした北原豆腐店・中町商店街の四季折々の日々が描かれる。
が。
本当の主役(?)は、商店街そのもの&そこに住むみんなと言っても良いんじゃないかなぁと。


商店街や町を舞台にした他の作品を考えてみると、むんこ作品全般※3や「月光橋はつこい銀座」(イシデ電)がパッと思い浮かぶ。
どの作品も、どこか懐かしい雰囲気が漂い、物語が進む毎にご近所の輪が広がって行く。
商店街&町って、寮や学校よりも広いけど、街や都市と比べたら圧倒的に小さい。
だから、そこで暮らしている人と人との距離が近くて、自然と触れ合う機会も多い。
商店街一丸となって
実際、今作でも話が進むに連れ、商店街的な賑やかさが増して行く。
商店街&町は、まさに広いようで狭い世間を象徴する舞台な気がした。


そして、四季折々の日々・何気ない日常を描くと言っても、その方法は多種多様&作者の味が出る。
うのはな3姉妹」で描かれる日々って、何だか凄く身近に感じられて。
四季毎には変化があっても、一日一日ではそうそう大きな変化なんてないかもしれない。
ある雨の日のこと
でも、そんな代わり映えのない日常を一面毎に描いていく事で、代わり映えのない毎日でも常に発見があって。
個人的には、“日常”という名のジグソーパズルのピースを毎回はめて行くイメージ。


この商店街・町の特徴と水谷フーカの日常描写が組み合わさって、商店街&商店街のみんなが主役と感じるのかなぁと。
一コマ一コマ、一4コマ一4コマ、一話一話の積み重ねが、中町商店街の毎日を作っていく。


ちなみに、「この靴しりませんか?」感想で触れた水谷フーカらしさは、モチロン今回も健在。
ただ、「うのはな3姉妹」では、また違った魅力を放っている気がした。
“おとぎ話のような柔らかくて優しい雰囲気”は、のほほんとしたご近所っぽさに。
“キラキラを凝縮させたような瑞々しさ”は、過ぎゆく日々の一瞬一瞬の輝きに。
“コロコロ変わる豊かな表情”は、各キャラクターの特徴に。
但し、“絶妙なタイミングでの赤面”だけは、主に南田君にしっかりと受け継がれている。
第1巻でも赤面しまくりで一番ヒロインな彼だけど、今後もガンガン赤面していくので乞うご期待?
南田君と桜
要するに、引き続き天然&鈍感な桜に翻弄される(?)という事だけど、凸凹夫婦コンビ&胸キュン担当として頑張ってもらいたい所!


既巻の「GAME OVER」や「この靴しりませんか?」とは、また毛色の違った本作。
タイム系の4コマ誌二誌で連載という事で全話読んでいる人は決して多くないと思うので、この単行本でまとめて是非。
描き下ろし(非4コマ)の「ちびはな3姉妹」では、3姉妹の過去も拝めます。
同時発売の「この靴しりませんか?」と共に購入して、コタツのような温もりを手に入れませう。
そんな冬に備えてのオススメの言葉と共に、本日は締め!



※1, 当方、最後に全部見たドラマは「白夜行」(2006年)という位にはドラマに疎いです。
※2, 「うのはな」は、“おから”の呼び方の一つだそうで。(参考:卯の花 - Wikipedia
※3, むんこ作品の多くが、埼玉県の“花丸町”という架空の町を舞台にしており、各作間のクロスオーバーもアリ。(参考:むんこ - Wikipedia

【当ブログ関連感想】
[水谷フーカ] 瑞々しく、優しく、幸せな“似たもの同士”達の日々 - 「この靴しりませんか?」
[水谷フーカ][楽園] 互いを想い合うからこその“対等であろうとする関係” - 「GAME OVER」