サクラサク!新生活へ送るエールと元気と喝!

さてさて、新年度が始まりました。
新生活の準備を何とか済ませたのも束の間、新しい環境・やるべき事で大忙しに。
4月も終盤に突入して、ようやく落ち着き始めて来た人も多いのではないでしょうか?


その新生活の多忙な日々の中で、ふと元気を失ってしまう瞬間があるかもしれません。
慣れない環境下で不安や疲労困憊を重ねると、過去の自分の選択は本当に正しかったのか?
或いは、“好き”という気持ちや熱意という取り柄は、役に立たないのではないだろうか?
特に、慣れない事だらけの新生活だからこそ、こういった悩みが浮かびやすい気がします。


そんな時は、例えば、適度な各々の趣味や「何もしない」をする等が有効でしょう。
そして、漫画好きとしては、漫画を読んで再び頑張る気力を手入れられたら至福のはず。
という訳で、今回は、新生活にエールと元気と喝(?)をお届けする作品達を紹介します!

「ぽすから」(中村哲也

ぽすから (2) (まんがタイムKRコミックス)
まずは、昨年『まんがタイムきららMAX』で完結した「ぽすから」です。
きらら系4コマと聞くと、可愛らしい女子学生達・終わらない安心の日常をイメージする人も多いと思います。
それも一面ではありますが、例えば、今作のように男女入り交じって過ぎ去っていく日々を送る作品もあるのです。


今作の舞台は、美大を目指す若者達が集う神田美術学園(美大予備校)。
一年間と言う時間制限の中で、共に楽しく過ごす若き挑戦者達と言うのは、一つの青春の図のはずです。
そして、受験という集団・自分自身との戦いがテーマである以上は、苦しい瞬間も訪れます。

さっきお願いした事は

受験ももちろんだけど

神頼みではなく。
入試を間近に控えた初詣の帰り道、白樹君は心の中で自分自身に誓います。
進路を決めたのも、受験先を選んだのも、今まで頑張って来たのも全部自分達
だから、神頼みはするけれど、最後に願いを叶えるのも自分達それぞれであるはずと。


この白樹君の決心は、受験だけでなく、進路全般でも一つの正解ではあると思います。
特に、受験の自分自身との戦いという面に関しては、奮起するに足る潔い考え方でしょう。
しかし、自分自身との戦いであると同時に、周囲に助けられたり戦ったりという面もあります。
周囲への負の感情
今作で感心した事の一つは、そういった周囲との関係の中で抱いてしまう負の内面も描いている事です。
ブコメ青春学園物であると同時に、どうしたって、受験では自分以外の全員がライバルで蹴落とすべき敵。
でも、その想いを明かせる友人がいるという事がどれだけ貴いか、正も負も描くからより分かるのではと感じます。


ちなみに、この負の気持ちの吐露回(?)は、今作の最終回に繋がっていると思われます。
負の面も見せ合った関係だからこそ、揺るぎない大切な絆となるという見方も勿論出来ます。
でも、それだけでなく、受験や進路が集団・自分自身両方との戦いと言う事も、より強調されて伝わって来る気がするのです。

はやて×ブレード」(林家志弦

はやて×ブレード 13 (ヤングジャンプコミックス)
次は、『ウルトラジャンプ』で連載中の「はやて×ブレード」(公式略称:はブ)です。
今作は、天地学園に集う十人十色の人間らしいバカ達が、剣を通じて織り成す学園生活を描いています。
その一方で、飾らない(或いは飾っても)バカ達だからこそ、真摯な想いを描き出せているとも思います。


第13巻の最後から、物語は、いよいよ待望かつ念願の頂上決戦へと移ります。
ひつぎと静久(しずく)・玲(あきら)と紗枝、それぞれ背負うべきモノがあって、負ける事は許されない。
負ける事は、今の彼女達からすると、これまで,今,これからの全てを失う事に直結します。
しかし、勝つ事でしか成し遂げる事の出来ない新しいステージを、各々が抱く故に避けられない一騎打ちです。


まずは、共に相棒のために剣を交える前衛の静久と紗枝。
この二人の断ち合いで焦点の一つとなるのが、“好き”や“楽しい”という気持ちです。
静久も紗枝も、勝ちたい理由は違えど(=それぞれの相棒のため)、この断ち合いを心から楽しんでいます。
“好き”や“楽しい”の先?

……ごめんね

“好き”だけなら

断ち合う事そのものに意味があるけど

…ごめん 今は――

勝つ事にしか意味がないの

けれど、“好き”という想いだけでは至れない頂きがあると、紗枝は謝罪の言葉と共に宣言します。
その気持ちを裏切ってしまうとしても、冷静に、貪欲に、今は“勝利”を得なければいけない時だと語るのです。
この言葉、そして二人の立ち位置の差は、前衛戦のみならず後衛戦まで生き続ける事となります。


そして、後衛のひつぎと玲で焦点の一つとなるのが、“努力”と“才能”の関係です。
ひつぎは、身体的なハンデをモロともせず、圧倒的な才能と努力をさも当然のように持ち合わせる学園の頂点。
対する挑戦者の玲も、傍目には十分な才能があり、この日のために血の滲むような努力を積み上げ続けて来ました。
遙かなる頂き
しかし、紗枝と自分の必死の覚悟と研鑽を以てしても、どうしても本気の刃を凌ぎ切る所までしか達せない。
“好き”や“楽しい”や“認められたい”という純粋な想いに嘘をついても、依然として壁は高くそびえ立つ。
誰よりも勝利に近いはずが、誰よりも苦境に立っているからこそ、玲の本心からの叫びが熱く心を打ちます。


“好き”や“楽しい”という気持ちを裏切らなければ、辿り着けない境地があるのか?
どれだけ努力を重ねても、次元の違う完璧な存在には一片足りとも追い付けないのか?
「はブ」が示す一つの答えは、最高潮の熱を帯びる本編で、是非とも読んでもらいたいと思います!

ふおんコネクト」(ざら

ふおんコネクト! (4) (まんがタイムKRコミックス)
最後は、『まんがタイムきららキャラット』で完結を迎えた「ふおんコネクト」です。
ざら先生は、先月より、同誌で新連載「しかくいシカク」を連載開始。
また、先日、『good!アフタヌーン』で完結を迎えた「ウチはおおきい」の単行本も発売されました。


さて、「ぽすから」の所で、極々簡単に触れたきらら4コマのイメージや種類。
ざら先生と言えば、そのきらら4コマらしさを的確に押さえた上で、独自の高密度な空間を展開する作者です。
それが可能なのは、高い実力や技術を持っているからだと思いますが、その魅力も含めて説明が非常に難しくもあります。


例えば、以前「ざら先生の特徴や凄さとは?」を話し合った事のある方々は、以下の感想を書かれています。
「ふおんコネクト」は、頭を柔軟にして、論理的に楽しめる4コママンガだぞ。 (from たまごまごごはん)
この4コマがすごいシリーズ「祝・完結 ふおんコネクトの魅力とは?」 (from 素晴らしい日々)
そして、たまごさんの感想の締めでは、今作を象徴するカットとして、以下のコマが挙げられています。

 この作品を象徴しているのはこのカットじゃないかと。

 ふおんが「出来ないことを出来るようにする方法」を軽快華麗に、時に迷惑に切り抜けていく様が、「ふおんコネクト!」というマンガそのものの面白さじゃないかと思うのです。

実は、このコマが収録されている話こそ、今回のテーマ“新生活へのエール”に直結しているのです。
この話では、卒業を間近に控えた先輩が、今の校舎に別れを告げるべくやって来ます。
最後のチャンスだからと、偶然出逢った夕先生&ふおんと校舎を見て回るという話です。


今まで一面的にしか見ていなかった校舎を、また異なる視点から見る事で、発見が沢山ある。
その発見が増えるに連れて、彼女の心の中には満足感と共に寂しさも募っていきます。
そんな彼女に対して、夕先生は、優しく笑いながら言うのです。
「選ぶ」という事
何を以て終わりや始まりとするかは、その人次第。
例えば、卒業は一つの節目ではあるけれど、それで過去や関係がリセットされるとは限らない。
むしろ、それらを自分がどう扱って生きて行くのかも、あなたは自由に選ぶ事が出来るのだと。


そうアドバイスした上で、大学入学後の彼女に向けて、英先生とふおんはメッセージを文字通り描きます。
「新しい冒険の旅はどうよ?」と、彼女に対して二人は問いかけます。
当人的にはイッパイイッパイで、楽しい事も苦しい事も盛り沢山であろう新しい冒険者へ最大級のエールを贈るのです。
贈る言葉
でも、常に前だけ向いて突き進んでいたら、疲れて立ち上がれなくなってしまうかもしれない。
そもそも、いつも全身全霊を掛けて頑張り続けられるスーパーマンは、そうそう存在するはずがない。
だからこそ、小さく添えられた「ほどほどにがんばれ〜〜〜〜!」も、大きな意味を持つと思います。



まず面白いのは、どれも新しい事に対する挑戦を描いていますが、感じ取れるメッセージが異なる事です。
勿論、新しい事や挑戦の内容の違いはありますが、全力で打ち込む当人達から見て決定的な差にはならないでしょう。
そのメッセージの違いは、どの時点での誰の視点から、その挑戦を見据えるかという所から生まれているように思います。


そして、今回紹介した3作品は、どれも自分の院試期間中に購読した作品達でもあります。
ともすれば何て事のない場面や話だと思いますが、当時の自分としては当然クリティカルヒットで涙する程。
でも、どの涙も悲しいや辛いではなく、「ありがとう」という感謝の涙なのです。


このテーマは、きっと物凄く普遍的で、一つの王道パターンと言えるかもしれません。
それが夢や目標の途中であっても、何かを新しく始める事には、等しく困難が付いてくるはずです。
必死で、一生懸命で、余裕がないくらい何かに対して打ち込んで挑戦できるのは、幸せな事だと思います。
でも、その途中で、心が疲れてしまったり折れ掛けてしまったりする事もあるでしょう。


そんな時に、自分にとってのエールになる作品があると、そこから更に頑張れると思うのです。
漫画や作者への感謝の念と共に、元気になって、また奮起出来る。
一人の漫画好きとして、また一つの幸せの形だと感じます。


そんな訳で、漫画好きの皆様、新生活・新年度、漫画片手に頑張って行きませんか?