幸せと安心の象徴!春爛漫のバカップル達!

突然ながら、「バカップル」という素晴らしいラブコメ用語があります。
かつてはリアルでも用いられていたはずの言葉ですが、今や死語と言っても過言ではないかもしれません。
では、このラブコメ用語は、漫画の世界でも廃れてしまったのでしょうか?


否!断じて否!
リアルでバカップル(という言葉が)氷河期だからこそ、漫画の各世界でバカップル力は日々増していると思うのです!
そのバカップル力たるや、読んでいてコチラが赤面して、恥ずかしくなって来る程。


しかし、その恥ずかしさは嫌な物では全くなく、むしろ幸せを感じる人が多いのではないでしょうか?
微笑ましいバカップル達は幸せや安心の象徴で、夢やロマンや希望に満ち溢れた存在だと思います。
という訳で、今回は、読んでいて恥ずかしくなるくらいのバカップル達を紹介します!

はつきあい」(カザマアヤミ

はつきあい 1 (ガンガンコミックスJOKER)
まずは、今回のテーマ“バカップル”で堂々の貫禄を示す「はつきあい」です。
ガンガンJOKER』で連載され、この春に更なる飛躍のためのリニューアルも控えている今作。
タイトルの「はつきあい」は、初めてのお付き合いを略した物。
つまり、今作は、色々な“はつきあい”のカップル達が織り成す群像劇です。


初めてのお付き合いと言えば、バカップル化と言っても言い過ぎではないでしょう。
ましてや、カザマアヤミ先生が描き出す“はつきあい”ならば、極上のバカップル達は必然です。
第1巻では5組、第2巻収録予定の雑誌掲載分でも続々とバカップル達が登場。
YES!バカップル!
群像劇という事で、各“はつきあいカップル達は、年齢や関係性が異なります。
当然、バカップル度合いも異なる訳ですが、それぞれのカップルでの差がまた一つのアクセントになっていると思うのです。
安心感重視のホンノリ甘いバカップルから、胸焼けしかねない激甘のバカップルまで選り取り見取りの完璧設計と言えるでしょう。


そして、そのバカップル度合いを示すパラメーターの一つが、素直な感情表現だと思います。
心を開く事の出来る、信頼の置ける相手だけに見せられる自分の本当の気持ち。
赤面のち抱擁
それは、赤面であったり、涙であったり、心からの笑顔であったり。
私達読者は、その表情が、大切な人にだけ向けられた掛け替えのないモノだと知っている。
全力でニヤニヤ胸キュン赤面悶絶を出来るのは、その安心感があってこそだと思います。


春には第2巻発売&新シリーズとして、一組のカップルを追っていく展開が始まります。
最初に書いた通り、今まではバカップル達の一面一面を描いてきた今作は、この春にリニューアル。
「一組のカップルにより深くアプローチ」との事で、バカップル度の更なる進化が期待されます。

「はるかぜびより」(来瀬ナオ

はるかぜ日和 (1) (バンブーコミックス WIN SELECTION)
次に、『まんがライフWIN』で連載中の「はるかぜびより」です。
はつきあい」同様に既巻1冊という事に加え、今作はWEB連載なので手軽に試し読む事が出来ます。
素直で元気でいつも一生懸命、猪突猛進なくらい彼女大好きなの村上太郎。
クールで感情をあまり表に出さず、ちょっぴり恥ずかしがり屋の森下吏南(りな)。
この二人が第1話の1ページでお付き合いを始める所から、物語は幕を開けます。


上記の通り、太郎と吏南は対照的な凸凹カップル。
熱烈アピールを絶やさない太郎に、押され気味な吏南という構図が日常茶飯事。
この時点で、傍から見れば最高にバカップルですが、ポイントは二人の関係だと思います。
凸凹カップル
太郎は、吏南が(混乱はすれど)嫌がるくらいアピールし過ぎる事はありません。
吏南は、そんな太郎の一途さに彼女のペースでゆっくりですが、更に惹かれて行きます。
そんな彼等の関係に、やはり安心感を抱く私がいるのです。


その安心感は、作中で“木の幹”に喩えられています。
恋愛や「好き」という気持ちは、よく咲いている花で表現されるモノだと太郎は考えるのです。
つまり、その想いはいつか色を失い、散って行ってしまうのではないかと、彼は一人言います。
桜の幹に寄り添って
しかし、そうではなく、互いの「好き」が到達する所は威風堂々とした大樹の幹だと、思い付くのです。
確かに、2人の初々しいバカップルっぷりや太郎の熱烈アピールを見ていると、彼等は満開に咲き誇った花のようです。
同時に、そんな安定したバカップルの彼等だからこそ、そう遠くない将来に幹になる姿も想像出来て、思わず微笑んでしまいます。

「バカバ」&「『バカバ』の+α。」(咲桜

バカバ (咲桜)
最後は、去年5月のティアで巡り合った究極かつ至高の一冊「バカバ」です。
今作は同人誌(オリジナル創作)ですが、今回の更新のキッカケでもあるので、是非とも紹介したいと思います。
タイトルの「バカバ」は、バカばっか!の略。
本来は相手を罵倒する「バカ」という言葉。バカップルの「バカ」も呆れを秘めたモノのはず。
しかし、カップル達が交わす「バカ」という言葉は、そうではない特別な意味を持っているように見えます。


例えば、カップル同士の「バカ」には、揺らぐ事のない安心感が込められていると思うのです。
今作の後書きならぬ中書きにて、作者の彩希(さき)さんは、以下のように語られています。

愛情のある「バカ」ってセリフっていいよね萌えるよね大好き他の人はどうなの好き!?
…っていう気持ちから描きはじめました。照れかくしもあきれるのも好き!
そして、この安心感の実際の形も、この中書きの後のエピソードで収められています。
「バカ」の持つ意味
ゆいの口から真っ先に出てくる「バカ」は、彼女の素直な気持ちで、弘人だけのモノ。
それを弘人は理解しているから、彼女の前で「バカ」であり続けられるのでしょう。


一方で、ゆい自身は、弘人に言われるまで「バカ」の真実に無自覚です。
でも、ゆいの様子を眺めているだけで、彼女自身うっすら気付いているように思えます。
彼にだけの「バカ」
と言うのも、彼女の「バカ」という台詞は、弘人に対してだけのモノだからです。
そして、その言葉を口にする時の彼女の視線の先には、常に弘人が立っています。
「バカ」という言葉は彼等にとっての絆で、だからこそ、本編ラストページでは心がホッコリするのです。



冒頭で、“微笑ましいバカップル達は幸せや安心の象徴”と書きました。
漫画に限らず現実でも、幸せそうなカップルは、見ていて微笑ましくなります。
特に現実では過度なバカップルにはイラッとしかねませんが、バカップルから得られるエネルギーもあると思うのです。
そのエネルギーの正体は、憧れと言うよりも、幸福感や安らぎである場合が多いのではないでしょうか?


また、それぞれの作品・バカップル達について、“安心感”という言葉を使いました。
惹かれ合う理由はバカップル毎に違うけれど、どのバカップルの繋がりも決して切れる事がないように感じられます。
その関係は、下記の「サヤビト」(伊咲ウタ)の拙感想で触れた二人だけの“絆”と似ている気がします。
[伊咲ウタ] 足りないモノを補い合える二人だけの“絆” - 「サヤビト」


互いに足りないモノがあるから惹かれ合い、互いのペースで足りないモノを補う事が出来る二人。
時間が流れて行っても、移ろわず失われず、きっと永遠だと思える二人の理想的なバカップル関係。
変わって行く事の方が自然な人間の気持ちや関係の中で、そう信じられる事は本当に幸せだと思うのでした。


ちなみに、上記三作品のヒロイン達には、隠れ(?)眼鏡っ娘という共通点もあります。
眼鏡と言うのは不思議なアイテムで、掛ける事で雰囲気や性格さえも変化するもの。
睦美さん眼鏡ver.
そんなギャップを可愛いと思うのは、私達だけでなく作中の主人公達も同様。
眼鏡を外した/掛けた自分に対してだけの素顔も見られて、一眼鏡で二度美味しいカップル達に幸あれ!